「牡蠣(かき)といえば?」と、全国どこで尋ねても、「広島」という答えが返ってこないことは、まずないだろう。かき類生産量の、6割前後を占めているのが広島県。続く宮城、岡山、岩手などは、いずれも多くて2割程度だから、広島のシェアは断トツといえる。
その広島産かきを道いた、かきフライや冷凍粒かきなどの製造で年間約50億円を売り上げているのが、タカノブ食品(広島県府中市)だ。企業規模の割には、一般消費者の間での知名度は低いかもしれないが、それもそのはず、同社の製品は一般小売店での販売よりも、いわゆるデパ地下やスーパーマーケットで総菜として販売されたり、ファミリーレストランや持ち帰り弁当のメニューに使われたりすることが多い。
つまり、食のプロからの高い評価を得ている “知られざる” メーカーなのだ。
* * *
産業チェーンという言葉がある。水産食品の場合だと、原材料の養殖、捕獲に始まり、加工、輸送、調理、販売に至る各過程を受け持つ多くのプロが、互いに連携して最終消費者まで届ける仕組みのことを指す。
生鮮品を扱う各企業が最大の注意を払うべきことの一つが、食中毒の発生、拡散といったリスクをいかに防ぐかだ。産業チェーンの中で1社でもこの意識が薄ければ、関わっているいる全社が不利益を被ってしまう。
タカノブ食品が、取引企業から高評価を勝ち得ている理由の一つが、トレーサビリティ、つまり流通経路の追跡が可能な体制の確立だ。同社が取り扱うかきは、7分割した県内の海域の、どこから、いつ水揚げされたものかを完全にトレースできるようになっている。
おいしさの尺度は、人の数だけあっていい――。これが同社のモットーでもある。揚げたての味を追求する場合する場合もあれば、消費者が持ち帰って食卓に並ぶ時に最善の味になるようコントロールしたい場合もある、そうした取引先のニーズに合わせて、かきのサイズ、パン粉の種類や比率を変え、100以上のバリエーションを提供しているという。
「仕事は裁量に任せる方法をとっている。決してトップダウンの企業ではない」と岡崎浩二(おかざきこうじ)社長は語る。
タカノブ食品株式会社
広島県府中市府中町209
売上高:49億4100万円
従業員数:100人
※ この記事は、広島県府中市「WORK & LIFE GUIDE BOOK 2019-2021」(2018年11月発行)を再編集したものです。